CHANEL NEWS

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FALL-WINTER 2014/15 HAUTE COUTURE
BY ANNE BEREST

会場の磨き上げられた床をサンダルで歩む花嫁――彼女が入場したグラン パレは、まるで教会のようでした。足元はゴールドのフラットサンダルですが、身を包むドレスはとても大きなシルエットで、トレーンがどこまでも続いています。純白の乙女という風情のアシュレイ グッドは、素足に近い足で一歩ずつ歩みを進めながら、観客をちらりと一瞥し、現代の聖母のような、清らかな白い顔を少しのぞかせます。
そして突然、観客の目に飛びこんできたのは、明らかなおなかのふくらみ。花嫁は妊娠しているのです! ネオプレン素材で仕立てられたエンパイア ドレスの白い生地の動きによって、満月のように丸みを帯びた腹部が引き立てられています。

カール ラガーフェルドによる2014/15秋冬 オートクチュール コレクション ショーのフィナーレ。純潔のドレスを身にまとった妊婦とは、なんて印象的なメッセージでしょう。投げかけているのは「挑発」ではなく、むしろ「刺激によって何かを生み出す」アイディアです。驚き、疑問、あるいは何らかの感情であるとしたら、それは私たちに何を語りかけているのでしょうか。人生は驚きに満ち、予想外のことがあちこちから次々に飛び出してくるもの。そして何よりも重要なのは、女性のかたちは完全には消し去ることはできないのだということ。命をふきこむために、曲線を描いていくのです。ファッション デザイナーの腕の中で、花嫁は、創造のメタファー、やがて訪れる誕生のメタファーへと変身したのでした。

不意に視界に現れたドレスに心を奪われ、心の奥底で共鳴したのはなぜか、言葉にするのは簡単ではありません。意識的、そして無意識的な無数のことがらが入り混じっているのです――なぜならそのドレスは、実際には無数のドレスであり、今朝、カール ラガーフェルドの花嫁は、無数の女性であったのです。

罪深き女性、マグダラのマリア。透けるような袖で華奢な腕を強調した、ヤン ファン エイクの描く中世の花嫁。金の刺繍を施しテンの毛皮で縁取りをした優美な白いドレスをまとい、夫から冠を授けられたジョゼフィーヌ皇后。しかし何よりも、彼女はイタリア ルネッサンスの女性です。素肌の首もと、ウエストを引き締める円錐形のトルソー。鮮やかで自然なラインが女性のシルエットに自由を与え、ウエストを中心とした壮麗なトライアングルを作り出しています。

数世紀も前に遡るスタイルでありながら、アシュレイ グッドのウェディングドレスは革新そのものでもありました。ネオプレンはダイビングスーツに使われる素材で、モールド成形が可能なため、縫う必要がありません。「シームレスのオートクチュール」……これこそ究極の洗練ではないでしょうか。そうです、あらゆる干渉が取り除かれたえもいわれぬ優美さこそが、生まれたての赤ちゃんの肌のように完璧なドレスを作り出すのです。

アンヌ ベレは作家で、著書に「Sagan 1954」(Stock出版)、共著書に「How to be a Parisian. Love, Style and Bad Habits」(Double Dayから9月に出版予定)がある。

Photo by Benoit Peverelli


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BACKSTAGE

2014/15秋冬 オートクチュール コレクション ショーのバックステージ

Photos by Benoit Peverelli

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CELEBRITIES AT THE GRAND PALAIS

Fall-Winter 2014/15 Haute Couture show.

Photos by Anne Combaz

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