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HATS OFF TO KARL
BY INGRID SISCHY

「私は今でも、自分が一体どういう人間なのかわかりません」。ゴードン パークスは、多様な分野で創作活動を行う自分自身についてこのように記しました。「自分の内面へと身を隠す方法があまりにもたくさんあるために、自分が何者なのか分からないのです」。 もちろん彼は、自分自身を正確に理解していました。彼はカテゴライズされることを拒み、境界や障壁を壊す先達でした。ゴードン パークスの名で創造性をテーマとしたフォトグラファーに贈られる賞があるならば、カール ラガーフェルドほどふさわしい受賞者はいないでしょう。彼は才能と魅力にあふれた人ですから。
      
一日の間に(時には夜にかけても)、カール ラガーフェルドは、私が知っている誰よりも多くの顔を使い分けています。ここでそのごく一部を紹介しましょう。まずはクリエイティブ ディレクターで天才的なファッション デザイナーとしての顔。彼はシャネルで29年、フェンディで40年以上も―これは世界記録です―この地位に君臨し、自身の名前を冠したブランド、カール ラガーフェルドも率いています。また、真の才能が導くままに自然に絵筆を操るアーティストであり、さらには世界中の図書館にも匹敵する知識で執筆に臨む作家でもあります。そのうえ、伝統的な製本技術の存続に貢献するパブリッシャーとしての顔も。友人やファミリーの中からキャスティングし、カサヴェテスの作品を豪華にしたような世界を創りだす映画監督。カール ラガーフェルドをテーマとする数々のドキュメンタリーで主役を務める、ウォーホル以来の大スター。上質でユーモア溢れる名言を数多く残し、インタビュアーやライターが憧れるウィットの持ち主。きわめて鋭いデザインの審美眼を持つ収集家。多くのプロを黙らせるインテリアデザイナー。そして、彼の敬愛する作家のひとり、エリザベス ビショップでさえ感心するであろう手紙を書き、広告においてもその秘めた才能は発揮されます。自身のブランドであるシャネルやフェンディの広告キャンペーンだけでなく、競合ブランドでさえも彼の撮影に頼るほどです。また、コカ コーラからアイスクリームに至るまで、あらゆる大衆的なものにオーラを与えることに、ウォーホルのような快感を覚える一面も。もう十分ですか? いいえ、カールはそうは言いません。彼は落ち着いて、まだ始まったばかりだと言うのです。もしあなたが、彼の成功を称えようとするなら、彼はこう答えるでしょう。「でもまだ次がありますよ」。

カール ラガーフェルドと写真との絆を表現するなら、写真は彼の拠りどころだと言えるでしょう。そこは彼が帰る場所。撮影する対象が建築や風景、ポートレイト、ファッション、静物など、何であっても同じです。他のファッション デザイナーなら、一日の仕事を終えた後、あるいはショーや長いシーズンを乗り越えたら、ゆっくり休むのかもしれません。でもカールは、そんな時でも、ほとんどずっと撮影をしています。撮影の目的は、アンダーグラウンドの雑誌であったり高級誌であったり、広告キャンペーンや、彼が自らに課す個人的なプロジェクトまで、さまざまです。私と彼は、写真に対する共通の情熱から、友人になりました。彼は出版される写真集のすべてに目を通し、今でもそれを続けています。

私たちが最初に会話を交わしたのは、ずいぶん前のことです。それは、カールが真剣にカメラと向き合うようになって間もない頃でした。彼の当時の写真を見て驚いたのは、その瞬間の重量感を捉えていたことです。おそらく、何年も写真を見つめてきたことで身についたセンスによるものなのでしょう。また、写真には彼の主張が表れていました。その後、山のような本やストーリー、研究、広告キャンペーンで写真を撮っていますが、最初の印象は変わりません。カールが撮影するところを見れば、一目瞭然です。私はニューヨークやパリ、ロサンゼルス、そして東京の街中での彼の撮影に同行したことがあります。いつでも大勢の人たちが集まってきて、交通渋滞がさらに混乱を引き起こし、ファンの人たちは、ひとつに束ねたヘアスタイルに高い襟の白いシャツ、それにサングラスというカールの象徴的な姿に見とれたり、「We love you Karl」と大きな声で呼びかけたりしていました。彼は常に礼儀正しく、また自分の知名度に少し驚きながら、顔を上げ、感謝の気持ちを表します。そしてすぐに撮影に戻ります。どんなことにも、彼の集中力が乱されることはないのです。

彼はその魔法のような感性を、自身の仕事だけに取っておくようなことはしません。昨晩、彼はニューヨークに到着した後、私を含めて数人の友人と夕食を共にしました。彼はすぐに私たちに、稀少な画集を見せたいと切り出しました。1914年のもので、彼がフランスで見つけたばかりの画集でした。ポール イリブがデザインを手がけ、オーギュスト ロダンやジャン コクトーなどの多くの芸術家が文章を添えています。ニジンスキー主演のバレエ『牧神の午後への前奏曲』をアドルフ ド メイヤーが撮影した写真も載っています。この画集は世界に6部しか残っていないそうです。私たちは全員でその画集を見て、その洗練されたデザイン、グラフィックの美しさ、紙の繊細さ、写真のプリント技術、写真にあふれる情緒に驚嘆し、これを元に復刻版を作るべきかどうかを真剣に議論しました。カールは、「私はこの作品を愛しています。たとえ数時間でも、手元から離すのが耐えられないほど」と言いました。いつか、カールの写真作品について、同じことを言う人が現れるでしょう。いや、実際には既に現れていますね。

写真: 6月1日、ニューヨークで開催された、ゴードン・パークス財団(Gordon Parks Foundation)主催の授賞式兼チャリティ ディナーでのカール ラガーフェルドとアンナ ムグラリス

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