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Thursday, March 4, 2010

NOT AFRAID!
"LES VANITES" BY ELISABETH QUIN

いつかは必ず私も死ぬということを、このスカルが示しています。そのことを今、私が見つめているこのスカルは知っているのでしょうか。
永遠の定番モチーフともいえるスカルは、生命とその終焉の象徴。アンドレ マルローは 「人は死体を前にして『なぜだ』とつぶやいた時に生まれるのだ」 と考えました。人は自らの死を意識した時に生を受け、その時から死の謎を追い求め続ける、と。

スケルトンやスカルのモチーフが初めて登場したのは中世でした。15世紀には最初の 「黄金期」 に達し、ヨーロッパではヴァニタス(空虚)画が描かれるようになりました。そして20世紀後半に、このモチーフは再び、猛烈とも呼べる勢いで登場したのです。
古典美術においては、スカルによる死の表現は一般に穏やかで神々しいものでした。死とは教会によって、永遠の命に続く道として約束されていたものだったからです。しかし、近代や現代の美術においては、かつての表現は痛烈に否定され、スカルはより不穏な意味を持つようになり、今となっては恐ろしく、暴力的で脅威的なものとなりました。
第一次世界大戦における大虐殺、マルクス主義と「神は死んだ」というニーチェの言葉の影響、ホロコースト、そして消費主義の台頭……そのいずれもが、西欧文化においてモチーフの意味を著しく変えてきました。今日のスカルは、率直にそして臆面もなく死の不条理を物語ります。自らの魅惑的な醜さ、もしくは恐怖心をそそる美を受け入れ、またさらには、憂鬱さに満ちた不気味なユーモアを含む恐ろしい叫び声を上げるのです。

迷信、それとも恐怖? 神秘への回帰? あるいは人生そのものへの頌歌なのでしょうか? 
スカルが私たちの一部であり続ける限り、時代を超えて、スカルのモチーフは美術館が研究するのにふさわしいテーマだといえるでしょう。マイヨール美術館の特別展 『C'est la vie! De Caravage à Damien Hirst(これぞ人生!カラヴァッジョからダミアン ハーストまでのヴァニタス)』 は、『Livre des vanités(ヴァニタスの書)』 の著者であるエリザベス クインの協力を得て実現したものです。この展覧会を記念して、シャネルはカール ラガーフェルドのデザインによる限定スカーフを製作しました。遊び心にあふれた発想、豊かなユーモアとエレガンス、さらには空虚と虚栄の両方を想起させるスケッチには、シャネルのスーツを身にまとって死と向き合う、人間の謙虚さを示すような姿が描かれています。大腿骨を巧みに重ねた格子模様はシャネルの象徴的なデザインであるキルティングをイメージさせます。マドモアゼル シャネルは、かつてハムレットがそうしたようにスカルを手に持ち、そのまなざしは、まばたきする束の間にこう語るようです。「わかっています……もう少しの間、愛、クリエイション……でもヴァニティ(虚栄)が何になるというのでしょう? わかっていますとも……」 
ユーモアと英知の教訓が打ち出されたきわめてユニークな今回の展覧会に、シャネルはラグジュアリーハウスならではの形で協力しており、製作した1000枚のスカーフは、シャネルとマイヨール美術館の大切な友人たちに贈られます。

各世紀において人が死をどう表現してきたかを回顧する今回の展覧会は、思い出がつまった特別な箱のように、まず私たちを第一次世界大戦までの時代に誘います。そこで私たちは、ポンペイのモザイク画やカラヴァッジョの 『聖フランチェスコ』、スルバランの 『聖フランチェスコ』、ラトゥールの 『聖フランチェスコの法悦』 といった重厚な逸品、バロック時代のミラドーリの静物画、目を見張るようなリゴッツィの作品に出会います。続いて近代美術に移ると、注目すべきはピカソの謎めいた「骸骨と水差しとリーキのある静物画」、そしてベルナール ビュフェの1947年の作品、また、ある米国人の個人コレクションであったためにこれまで埋もれていたセザンヌの名作、さらにはポール デルヴォーのキリストの磔刑を描いたきわめて衝撃的な作品などを目にすることになります。このデルヴォーの作品は、時代が時代ならば教会から除名され、火あぶりの刑に処せられるほどのものといえるでしょう。そして、最後に現代の作品として出会うのは、ジャン=ピエール レイノー、メイプルソープ、ハースト、チャップマン兄弟、バルセロ、ペンク、バスキア、リヒター、ダニエル スポエッリらの作品。こうして、偉大なコレクションを完成すべく今もなおスカルのモチーフはテーマとして取り上げられるのです。

各時代において、芸術家たちは存在と不在、存続と忘却の間の振れ幅を見つめてきました。彼らの作品は、2010年6月28日までマイヨール美術館(住所:61 rue de Grenelle, Paris 75007)に展示されました。

画: カール ラガーフェルド

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