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THE READY-TO-WEAR SHOW
BY ELISABETH QUIN

カントリーシックな春夏コレクションに続いて、この冬、シャネルは北極へ向かいます。グラン パレのグラスルーフが映し出すのは、氷塊から切り出した巨大な氷山。氷山から溶け出した水はフィヨルドを思わせるブルーの色をたたえてフロアを覆います。ショーの陽気なプロローグに登場したのは男女のイエティの一団。フェイクファーのフードつきジャンプスーツに身を包み、静かにランウェイを進みます。カール ラガーフェルドのインスピレーションは、気候変動や異常気象から、金融危機の終焉を期待する楽観論にまで広がっています。ユーモアやファンタジー、モダニティー(現代性)によって、シャネルのプレタポルテに新たなアイコンを打ち立てたいとのカール ラガーフェルドの願いから、ラグジュアリーで魅力的、かつ実用的なコレクションが生み出されました。

あらゆるところに取り入れられているファーは、カールが生み出した「ファンタジーファー」(「フェイク」や「人工毛皮」よりもずっとエレガントなネーミングとして)。ジャケットや、ロバート ライマンの絵画を思わせる白いロングコートの裾を飾ります。夜の帳がおりる頃、冠雪の光に輝く白い「トワイライト」ドレスのアクセントにもファーが使われています。シャネルを象徴するツイードに編み込まれているファーもきわめて効果的に、水晶や苔、冬季の鳥の羽毛、あるいはホッキョクグマのやわらかな毛皮を連想させます。

チョコレートバーのようにニットとファーが縫い合わされたデザインが印象的なコート。スーツのジャケットには輝くクリスタルのピンを使った刺繍が施され、チェリーレッドののドレスを飾るフリンジは、まるで鍾乳石のようです。膝上の丈が多い今回のコレクションですが、そのシルエットに力強さとゆったりとしたボリューム感を与えたのは、寒さから身を守るためのファー。氷柱のようなヒールのファーブーツや白のショートブーツには、スキーのアイディアを取り入れて、実用的な透明のブーツカバーが付いています。魅力あふれるファンタジーファーのストレートパンツは、普通ならフェミニンなはずのシルエットなのに、ユニセックスで謎めいた印象を与えます。このコレクションで次々に現れる豊かなメタファー(隠喩)。それは、独創的で超現代的な 『氷の女王』 から着想を得たもの。彼女はアイスキューブをモチーフにしたハンドバッグを抱え、雪が霜で覆われて輝いているようなネックレスを胸にまとっています。氷の結晶の刺繍が施され、美しく長い裾を引き、真っ白なチュールやニット、レースがふんだんに用いられた純白のドレスが、暗い夜を明るく照らします。太陽が決して昇らない、長い極地の夜が終わるまで。

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